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いわゆる定款たたき台に対する一私見(再録)
東京都立大学法学部教員 高村学人
2004.9.6
 

 私は、新大学設立本部経営準備室が2004.7.23を締切期限としてパブリック・コメントを求めた「公立大学法人首都大学東京定款(たたき台)(2004年7月9日)http://tmu.pocus.jp/sdt-teikan070904.html)」に対する私見を経営準備室及び都立大学総長にメール送信した。
 しかし、今日にいたるまで、何の回答もないどころか、そもそもメールを受信したという返事すらも両者からもらっていない。
 ところで、本日、新大学の設置認可の再審査が行われるという噂にも接した。非常に拙い意見であり、公にすること自体にかなりの躊躇いがあるのだが、より適正な審査が行われることを願って、この場において公表・再録することとした。

以下の文書は、

Date:Fri, 23 Jul 2004 00:03:37 +0200
Subject:いわゆる定款たたき台に対する一私見
From:Gakuto TAKAMURA
To:xxxx@zzz.metro-u.ac.jp
Cc:mogi(*@以下は削除)

に送信したオリジナル版に

Date:Mon, 26 Jul 2004 04:11:48 +0200
Subject:Re: いわゆる定款たたき台に対する一私見(若干の修正および注釈)
From:Gakuto TAKAMURA
To:xxxx@zzz.metro-u.ac.jp
Cc:mogi(*@以下は削除)

に送信した修正・注釈を加えて、わかりやすく編集しなおしたものである(以降、2004.9.6版と呼ぶ)。

◆◆◆◆◆
 
 
2004年7月23日 (文責 法学部教員・高村学人)
 (同年7月26日に修正と注釈を追加)

私が、当該たたき台案の存在を知ったのは、一昨日であり、意見提出期限締切日は、本日であった。他の関連資料も全く手元にない。このような限定的な条件の下であるが、以下に若干の私見を述べておくことにする。

  1. 法人の名称は、「公立大学法人(東京都立大学・東京都立科学技術大学・東京都立保健科学大学・東京都立短期大学・首都大学東京)」に訂正すべきである。都のこれまでの見解でも、2009年度まで前者4大学は、存在するとされている。これら5大学が一つの独立行政法人に属するのであるから、「公立大学法人首都大学東京」では、誤解を招く名称となる。
    1.への修正
     1)提案した名称では、ちょっと長すぎるのではないか、2)規制緩和の文脈において、独立行政法人の名称選択の自由度は、私学なみに高いのではないか、という意見に接した。
     よって、次のような名称を一私見として再提案したい。
    「公立大学法人「太陽の季節」学園」
    「日本にこれまでにない大学」を作るというのが、「改革」のスローガンであるから、法人のネーミングも大胆なものが良いと思った次第である。
    ただし、法概念上は、最初の私見で述べたように、5大学が一独立行政法人の下に並列的に存在するということを、定款でも明記しておく必要があると考える。

  2. 財産権に関わる条文が全く欠けているのは、定款として欠陥がある。これまでの「公の施設」としての都立四大学の財産は、「公立大学法人(東京都立大学・東京都立科学技術大学・東京都立保健科学大学・東京都立短期大学・首都大学東京)」に移転すると明記すべきである。
    2.への修正および注釈
     新しく得ることが出来た資料(第4回経営準備室会議資料)によると、土地や建物の所有や貸与関係については、すでにかなり整理されているということがわかった。
     その点において、やや不十分な情報の下で、上のような意見を述べたことをお詫びしたい。
     ただし、法人の定款においても、やはり財産関係については、明記しておいた方が無用なトラブルを未然に防ぐことができるのではないか、という認識自体は、変更するものではない。
     最新資料において、とりわけ私の注意をひいたのは、晴海キャンパスが、出資ではなくて、貸与とされている点である。さすがに民間の経営感覚が生かされていると思った。
     周知の通り、いわゆる「ロースクール」は、これから絶えず厳しい第三者評価の洗礼を受ける部門である。仮に失敗して、廃校となれば、土地や建物は、すぐに別の用途に使える可能性を残しておいた方が、都民の税金を無駄にしないだろうという設計に、私も大いに賛成である。
     また逆に、大成功した場合は、民間資本や私学に高い金額で、売却することも可能であろう。
     理事長予定者が「財界」の中で述べたとされる、赤字から黒字への大学の体質転換のためには、確かに、このような大胆な民間的な発想が不可欠だと思えた。
     これが本当の「行政改革」というものであろう。
     ただし、若干の苦言を呈すれば、近代経済学のCOEグループのような巨額な外部資金を獲得することのできる基礎研究部門を切り捨てたというのは、大学経営という観点からしても、かなりの失敗ではなかったろうか。
     都立大学は、長年の都民の血税に基づくところの貴重な公共財である。研究とは、長期の持続的な投資があって、はじめて成立するものであることを、忘れてはならない。

  3. その上で、この新法人が所有する財産の使用権についても明記すべきである。使用権は、これら5大学によって「共有」的に管理される旨の条文を定款に書き込む必要がある。登記手続も行った方が良い。そうでなければ、今後、無用なトラブルを招くことになろう。
    3.への注釈
     「共有」という表現は、解釈の幅が広く、多少の誤解を生むということがわかった。 現大学残留者の研究室に、マンションの区分所有権のようなものを設定しろといった極端なことを主張するものではない。
    新法人の財産に関する大幅な変更、言い換えれば、現構成員が事実上有しているところの研究室や図書などの使用権に大幅な変更を加える場合には、新法人の下に併存する5大学の代表者の全員一致が必要であるというごく当たり前の法原則を述べたにすぎない。
    #ドイツ流の概念法学、あるいは社会学的には、「合有」として考えてもらっても良い。 所有権者となるところの新法人の長が、このような事実上の使用権を排除しようとするならば、それは、民法294条に抵触するものとなることを警告しておく。
    これは、むやみに新法人に楯突こうという主張ではなく、紛争を未然に防ぐための法制度設計の提案として行っているつもりである。

  4. いわゆる「首都大学東京」を除く、4大学の学長の任命権は、単なる「首都大学東京」の理事長にはない。5大学は、一独立行政法人の下に並列的に存在するものであり、上下関係にあるわけではない。
    4.への注釈
     これまで私が得た情報によれば、新理事長予定者は、新大学すなわち首都大学東京の理事長であって、5大学を束ねる新法人の長であるという風には、なっていないのではないかと思う。
    であれば、任命権をいくら定款で定めても、そもそもの権原すらないとも言える。新理事長予定者は、地位確認を都知事に対して求めるべきではなかろうか。

  5. 現四大学の学長の選出は、現在の学則が各大学の評議会によって自ずから廃止されない限り、現行規則に従って、行われるべきである。そうでないとするならば、「公立大学法人首都大学東京」は、都がこれまで文部科学省に対して説明してきた「移行型独立行政法人」と言われるものではなく、全くの新設大学として設置認可を再申請すべきである。新設大学就任予定者全員の厳格な教員適格審査を文部科学省に求めるべきである。
    5.への補注
     都知事が述べるように首都大学東京に反対し、就任を拒否した教員は、「外部評価を嫌がっている教員」という認識は、全くの誤りである。むしろ大学教員の就職氷河期において、あえて厳しい外部の市場評価を仰いでみようとしている教員達であるという認識の方が正しい。
    「現場主義」「ものづくり的感覚」とかいうものを新大学の理念に掲げているならば、本当の現場をよく調査してから、設計そのものをつくりなおすべきではなかろうか。
    また首都大学東京への就任者の教員審査を省くという便法に出るということは、果たして、本当の「改革」なのだろうか?
    任期制の下であっても再任審査は、内輪でできるから、ほとんど心配することはない、というのが新大学就任者の一般的な受けとめ方であるとも伺っている。これで本当に十分な教育水準を長期的に保てるのだろうか?

  6. ところで、現四大学の来年度以降の法的性格は何か、と尋ねられるとするならば、それは、民主的な手続によって選出される学長の「自然的身体」が表象するところの「擬制的人格」であると答えておこう。それは、いわゆる「権利能力なき社団」と言われるような判例・学説上の定義が曖昧なものではなく、中世以来の歴史を持つ、具体的かつ明確な「法的人格universitas」である。

  7. 定款で示されるところの「首都大学東京」の組織構造についてコメントしておく。現在、いわゆる「構造改革」という名の下で、企業破産が増大しているが、それらの破産していく企業の内部構造と「首都大学東京」が作り出そうとする構造は、全く類似している。それは、今風に言えば、コーポレートガバナンスなき、ワンマン経営型企業である。私は、すでに公にしているように、このような「首都大学東京」に就任する意思は、全くない。
    7.への脚注
     この論点は、私のオリジナルなものではなく、「世界」での近代経済学グループの論文から示唆を得たものであるということを記しておく。

  8. 以上に述べた意見を考慮せず、このままの形で新大学設置に突き進むとしたら、それは、これまでの都政が築き上げてきたところの都民の共有財産を全て破壊するものであること指摘しておく。これからクビダイドットコムが明らかにするように、人材流出の現象は、都が把握しているよりも、はるかに大きいものであり、今後も歯止めなく、雪崩式に増えていくものである。一定数の就任承諾書を確保したつもりかもしれないが、法人への就任承諾は、別次元の問題であり、たたき台のような定款案がほとんど変更されないとするならば、さらに大量の非就任者がでる可能性を警告しておく。
     このような事態を発生させた責任は、全て管理本部にあるのであり、「首都大学東京」への就任を拒否した者に責任を転嫁させようとするのは、全くのお門違いである。

  9. 法人にとっての「定款Constitution」とは、国家にとっての「憲法Constitution」と同様の性格を持つものである。戦後憲法の押しつけ的な性格を批判し、自主憲法制定の運動を担っている都知事、学長予定者が、このような短期間で、大学構成員に、Consititutionを押しつけるという行為に出たのは、私にとって、パロディーのように映った。

  10. またこのまま行くならば、新大学の英語名は、Universityではなく、Collegeにした方が、より実態を反映した訳語になることも最後に付言しておく。
       文書によるご回答を期待している。

*7/26メールのまとめ  実りある新大学設計のために、実証的かつ建設的な議論が行われることを期待している。

*追記 (2004.9.6)  「私見」に対するご意見・ご批判は、gakuto.takamura@kubidai.comに送信していただきたい。その上で、他日、「補遺」をリプライとして公表することを約束しておく。

この記事へのコメント

投稿日時: 2004-9-30 13:04, 更新日時: 2004-9-30 13:07

東京都大学管理本部からのリプライ

 2004.9.14付で、東京都大学管理本部から、私の公表した「定款(たたき台)案への意見」について、回答があったので、以下に収録する。
 この管理本部からの回答は、私宛に直接、送られたのではなく、評議会の一構成員を経由して、受け取ったものである。

---以下、引用---

 ○法学部・高村助教授
 ・名称については公立大学法人首都大学東京とする。旧大学は最長平成22年度までしか存在しないため、新大学の名称を付した法人名とする。
 ・財産登記などは今後の検討事項とする。
 ・理事長は、平成22年度までは、新大学と旧大学を合わせた5大学を包含する法人の長(長としての権限をもつ)である。

–––以上まで---

若干のコメント(2004.9.30)

 当然、自分としても再リプライする予定である。
 補遺を書くことは、初回の投稿で、皆様に約束した事項であることを、ここで再確認しておく。


投稿日時: 2004-9-9 16:52, 更新日時: 2004-9-9 16:57

茂木総長からのコメント(および投稿への追記)

 コメント元である投稿を行った後、私は、以下に引用されているメールを、「たたき台」案へのコメント提出先であった担当者および茂木総長に送信した。
 その翌朝、一番に、茂木総長から、次のような回答があったので、以下に、転載することにした。

---以下に、茂木総長からのメールを転載---

Date: Tue, 7 Sep 2004 09:00:33 +0900 (JST)
From: mogi
To: Gakuto TAKAMURA
Subject: Re: Re: いわゆる定款たたき台に対する一私見(若干の修正および注釈)

--- Original Message ---
>Date: Mon, 06 Sep 2004 03:56:22 +0200
>Subject: Re: いわゆる定款たたき台に対する一私見(若干の修正および注釈)
>From: Gakuto TAKAMURA
>To:[担当者様]
>Cc: mogi
>
>
>[担当者]様、cc;茂木総長
>
> 7/23日送信の定款たたき台案に対する私見への
> 返事がないため、kubidai.comというインターネッ
> トサイトに私見をさきほど公表しました。
> 大変、失礼な行動を取ってしまったことお詫び
> 申し上げます。
> いつの日かお返事いただければ、幸いです。

まことにすみませんでした。学内から意見をいただいたりして管理本部に伝える場合、意見提出者に直接に返事を差し上げることはしてこなかったので、今回も意識もせずにいつもの通りのやり方をとりました。但し、それらをどう扱ったかについては部長会または評議会で報告しています(文書で)。先生のものは総長意見や理学研究科、人文[??]教授(これは人文学部長が内容了解のものです)などとともに掲載して管理本部に送りました。手直し等はしておりません。

なお管理本部からの「回答」ないしはそれに準ずるものは未だに届いていません。総長としては8月17日の経営準備室運営会議において督促したところですが・・・。

以上、お詫びかたがた、ご報告まで。

茂木俊彦

---以上まで---

追記

  1. いわゆる私が締切日として記載した日付、2004.7.23は、都立大内の締切日であり、実際の経営準備室への発送日は、その翌週であったとの情報を得た。この点の記載が十分ではなかったため、関係者には、やや誤解を招いたこと、お詫び申し上げる。
  2. 私は、てっきり、定款へのコメント提出先としてメールアドレスに公になっていた職員は、経営準備室会議の裏方のような役割をやっている管理本部の職員であると思っていた。しかし、これは、誤認識であった。担当の事務の方に、精神的な負担を与えてしまったこと、お詫び申し上げる(*この投稿と同時に「お詫び」メールも送信する)。
  3. 以上の総長からのメールにあるように、管理本部は、定款たたき台案に対する都立大学からのあらゆる意見に対して、なおも無回答となっている。そうでありながらも、管理本部が、「移行型」の独立行政法人として、文科省に認可を求める路線を変更しないとするならば、それは、自己破綻を引き起こすだけではなかろうか、ということを指摘しておく。
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