東京都による大学破壊を歴史に刻む
サイトマップ   昨日のトップテン
トップページ  >>  法的諸問題  >>  いわゆる「新法人の『中期目標素案(たたき台)(2004年11月9日)』」への意見書
いわゆる「新法人の『中期目標素案(たたき台)(2004年11月9日)』」への意見書
東京都立大学法学部教員 高村学人
2004.11.25
 

私は、新法人の定款に関する私見として経営準備室に送信した意見書を当サイトに公表した(2004.9.6)。
 この意見書には、ごく簡単ではあったが、管理本部からの回答があった(2004.9.14)。本来ならば、当サイトで約束したように(2004.9.30)、意見書の補遺を、管理本部の回答への再リプライとして準備すべきであったが、その後の定款をめぐる議論の推移についての情報が全く不足していたこともあり、そのような作業を行う余力がなかった。
 ところで、来週頭の都議会では(2004.12.13,14)、新法人の定款、現大学を廃止する条例に関する議論、議決が予定されている。
 私は、その新法人の中期目標に関する意見書(2004.11.24)中期計画に関する意見書(2004.11.29)を、総長および大学の事務担当者に送信し、経営準備室への転送をお願いした。それら意見書は、提出済の定款案への意見書での私の基本的な考え方を、より具体的レベルにおいて展開したものである。
 これから行われる新法人の定款と中期計画、目標に関する議論、現大学の新法人への移行のあり方に関する議論が、より活発に行われることを願って、以下で、両意見書を公表することにした。

経営準備室による中期目標素案(2004.11.19)については、以下で閲覧ができる。
その目次 http://tmu.pocus.jp/chukimokuhyo-soan-mokuji.html
その本文 http://tmu.pocus.jp/chukimokuhyo-soan-honbun.html

同様に、中期計画素案(2004.11.25)については、
その目次 http://tmu.pocus.jp/tmu-chukikeikaku-mokuji112504.html
その本文 http://tmu.pocus.jp/tmu-chukikeikaku112504.html
をクリックして頂きたい。

なお人文学部の評議員による中期目標、中期計画についての意見書が、
http://tmu.pocus.jp/ishikawa2cm.html
http://tmu.pocus.jp/jinbun2ck.html
で公表されている。
それ以外の意見書も学内から提出された。

以下に、送信したテキストを再録するが、事実認識に関する誤り、誤字等が若干あった。
それらについては、修正を施し、注)において、当初の記述を示した。
 また幾つかの論点については、補足的に説明を行っておくことが必要であると思えたので、補注)を加えることにした。

なお予めお断りしておくが、以下の意見は、私、高村の全く個人的な見解であり、非就任者の会の集団的な見解ではない。締切までの期間も極めて短く、意見書作成にあたって、会員内部での調整作業は、全く行っていないということも念のため、記しておく。

––(以下から「中期目標」への意見書)--

  1. 法人の名称は、「首都大学東京」とは、異なるものにすべきである。その理由は、「いわゆる「公立大学法人首都大学東京定款(たたき台)(2004年7月9日)」に対する私見」で、すでに述べたので、ここで、繰り返し詳述することは、差し控える。
     しかし、2010年度*1までは、現大学の学生・院生が、現大学に帰属するという身分を有したまま、存在し、また来年度も現大学を所属先として選択する教員もいるのであるから、現在の4つ都立の大学をも束ねる法人の名称を「公立大学法人首都大学東京」とするのは、これらの現大学構成員の名誉を著しく損なう恐れがあるということを、改めてここで指摘しておかなければならない。
  2. 法人の中期目標には、都立の4つの現大学の学生への教育、院生の研究環境を 十分に保障することが先頭に来なければならない。
     素案は、法人の中に作られる一つの「権利能力なき社団」としての「首都大学東京」の目標に掲げているに過ぎない。素案が扱うような事項のほとんどは、教学事項に属するのであり、法人の中期計画として論ずべき類のものではない。
  3. 仮に経営準備室の予定通りに計画が進んだ場合でも、「公の施設」としての現在の4大学が、新しい「独立行政法人」へと移行し、その新法人の下で、5大学が並存するという状態が、2010年度*2まで存続するのであるから、財産権について定款で何も定めないのは、意味のない混乱を招く要因となる。この点についても「定款(たたき台)への私見」で指摘したのであるが、全く考慮されなかったことは、遺憾である。
     示されている「中期目標素案(たたき台)」の最後では、「法人のリスク管理も、基本的には法人の自己責任のもとで行われる必要がある」と書かれている。起こりうる混乱については、まさに新法人の経営組織の「自己責任」として、対処していただく他ないのかもしれない。
  4. 素案は、留学支援、海外との大学との協定の拡大を目標に掲げているが、そのような目標をまじめに追求するのであれば、即座に、新大学をサポートする会員制クラブ「the Tokyo U-club」の設立総会の席上での、理事長予定者や都知事が行ったとされる発言(毎日新聞2004年10月20日朝刊)、すなわち「学校さえ選ばなければバカでもチョンでも、そこそこの大学に入れる」(理事長予定者)、「フランス語は数を勘定できない言葉だから国際語として失格している」(都知事)といった発言を撤回すべきである。
  5. 素案では、「首都大学東京の使命を踏まえた研究に対して、傾斜的に研究費を配分し、研究の活性化を図る」とされている。いわゆる「傾斜的研究費配分」は、すでに前倒しで今年度から実施された。まずは、この研究費配分の審査基準、審査や執行のプロセス、その成果を、独立した外部の第三者機関によって、客観的に評価するということが、必要ではなかろうか。その作業を通じて初めて、そのような制度が、法的な問題点がないのか、新大学でも有用な研究費配分政策となりうるかが、はっきりと検証されるであろう。
  6. 「法人運営の改善に関する目標」に関連して言えば、まずは、去年度に開校した晴海の法科大学院が「税金投入額に見合った成果」を収めたのか、きちんと評価するということから出発するのが、一番、良いのではなかろうか。1)独立した校舎で行った新規の事業であるので、どれだけの費用の投資を行ったかが計量化しやすく、2)全国共通の基準で、第三者による事後評価が行われる予定であり、そのシステム作りも現在、進んでおり、どれだけの効果を得たのかも計量化しやすい。すなわち、最良のモデルケースがすぐに得ることができると言うことである。
     第三者による評価が芳しいものではなく、公立大学としての特色ある教育を行えなかったことがはっきりするならば、まずは、即座に学費を私立大学並に上昇すべきであろう。 そのような経過的措置を取ったとしても、法科大学院が赤字採算部門であるということが立証される場合には、「柔軟かつ機動的に」当該研究科の教育研究組織を見直すべきである。
  7. 経営準備室が説明してきた「新人事制度」が、本当に研究者にとって魅力的な制度なのか、管理本部が説明してきたような成果があったのか、ということを検証するシステムも必要となろう。独立した外部の評価機構によって、流出した人材、流入してくる人材の質的な調査、新大学設立が教育・研究組織にもたらした影響、混乱の度合いの検証を行うべきである。
  8. 率直に言って、新大学「首都大学東京」の基本理念や目標は、民間のシンクタンク、新設の私立の大学や専門学校で十分に達せられる類のものである *3。「財務運営の改善に関する目標」に関連して言えば、新大学が、財務上、理事長予定者が目標にした「黒字体質」に脱却できないことが明らかになった場合、民間売却等も含めて、ストックとしての現在の研究・教育の施設、スタッフ等が、より良い条件で、継承される方法を探るべきである。
  9. 前回の「定款(たたき台)案」と同様に、今回の「中期目標素案」もパブリック・コメントの期間が短すぎる。また現大学の構成員への周知もはなはだ不十分であった。よって、新大学の失敗が明らかになった場合のすべての責任は、管理本部とこれに積極的に追随するという路線を選んだ新大学の管理職者に存すると言える。新大学設置の責任者は、このような一方的な改革路線が、どれだけの貴い犠牲者を生み出したのか、ということについて、絶えず自覚的であってもらいたい。

––(以上まで「中期目標」への意見書)--

追伸

私の両意見書に対するご意見・ご批判があれば、gakuto.takamura(AT)kubidai.com に送信していただきたい。可能な範囲で、この場で、リプライする予定である。


*1 送信した文書では、2009年度と誤記した。
*2 送信した文書では、2009年度と誤記した。
*3 補注)新大学の目玉事業とされるビジネススクール(夜間社会人大学院・新宿)、ロースクール(専門職大学院・晴海)、都市政策コース(2006年度開設予定)、インダストリアルアートコース、観光・ツーリズムコース(仮称、開設準備中)等を念頭においての意見である。また2つの都立高専を改組統合して、新法人の元に置く予定の新たな高専や、IT技術専門家を養成するとされる「産業技術大学院」についても同様である。首都東京において、これら分野の教育を提供する大学や専門学校は、すでに多く存在するのであるから、公立大学があえて都民の税金を大量に投入して、事業を行う必要性は、乏しいと考えられる。他方において、都立の4大学において既に蓄積のある研究・教育部門は、今後も、公立大学の使命として、この公共財を発展させることが、重要であると考える。
都立大の風景
新着情報 サイトマップ 昨日のトップテン お問い合わせ
Copyright © 2004-2018 首大非就任者の会 All Rights Reserved.