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首大非就任者の会では,2004 年 7 月末に発表した 25名だけが「首大」への就任拒否をしたわけではない において,前年 8 月 1 日の東京都による首大 (首都大学東京) 構想公表以降,その時点までの 1 年間に都立大学文系 3 学部教員のどれだけが流出したかを示した。さらに,25名だけが… を発表後,首大開校直前 (2005 年 3 月) までの間に都立大学文系 3 学部と理学研究科 (理学部) において*1 新たに生じた人材流出について,都立大学教員流出情報 2003-2004年度 として定期的に報告してきた。これら 2 つの調査結果を以下にまとめておくことにしよう。(都立 4 大学全体については 25 名だけが の2節を,首大開校後の教員流出状況については新しい記事:首大開校直後 (2005-6年度) の教員流出 を御覧いただきたい。) なお,以下において この色の文字列 は, 本稿最終節の 表 1中の項目名を表している。
1. 過去の平均転出者数との比較 †
図 1は,首大構想が姿を現した 2003 年 8 月から 首大開校直前の 2005 年 3 月までの 20 ヵ月間の都立大学教員流出数 と 過去の20ヵ月あたり平均転出者数 [推定値] を比較するためのものである。ここで,教員流出数 とは, 2003 年 8 月から 2005 年 3 月までの転出決定者数 と 首大就任非承諾者数 の合計である。(前者は,首大就任非承諾者の中からの転出を含まないものとして定義しているので,両者の間に重複はない。) データの詳細については,最終節を参照されたい。図 1の棒グラフにおいて,各学部の下段の棒の長さがこの 教員流出数 を表している。各学部の上段の棒の長さは,2002 年度までの 10 年間の 過去の 20 ヵ月あたり平均転出者数 [推定値] である。
図 1のカッコ内の数字は,首大開校前 20 ヵ月間における各学部の 教員流出数 の,過去の 20 ヵ月あたり平均転出者数 [推定値] に対する比率を表している。文系3学部においては,この比率は約 10 〜 15 倍にも達する。首大就任非承諾者数 が 1 名に過ぎない理学研究科においても,過去の 20 ヵ月あたり平均転出者数 [推定値] の 2 倍の流出があったことがわかる。また,教員流出数 ではなく (首大就任非承諾者数 を含まない) 2003 年 8 月から 2005 年 3 月までの転出決定者数 (緑の棒) だけに着目しても,各学部ともに過去の平均を遥かに上回る数の転出者が出たことも見てとれる。
2. 首大移行可能教員数に占める流出教員数の割合 †
図 2は,2003 年 7 月 (首大構想公表直前) において都立大学文系3学部・理学研究科に在職しており,本人が望めば首大に就任することが可能であった教員 (首大移行可能教員数) のうち,どれだけの人数が首大に就任しなかったか (教員流出数) を表している。(データの詳細については,最終節を参照していただきたい。) 図 2のカッコ内の数字は,各学部の 教員流出数 が 首大移行可能教員数 に占める割合である。法学部および経済学部ではおよそ半数,人文学部では 1/4 強の教員が流出したことがわかる。
文系各学部の実態の詳しい解説については,以下を参照されたい。25 名だけが「首大」への就任拒否をしたわけではない の4節 (人文学部),5節 (法学部),6節 (経済学部), 都立大学人文学部文学5専攻の崩壊,都立大学法学部法律学科の崩壊 および 都立大経済学部の分裂と首大経済学コースの消滅。また,都立大学教員流出情報2003-2004年度 からは,理学研究科では特に数学専攻の教員流出が顕著であることがわかる。
3. データ †
図 1および 図 2のグラフは,次の 表 1に基づいて描かれている。この表の項目 5 〜 10 が 図 1に,項目 4, 7, 11が 図 2にそれぞれ対応している。
表 1: 首大構想公表時から首大開校直前までの都立大学教員流出状況
人文 | 法 | 経済 | 理 | ||
1. | 2003 年 7 月時点の教員数 (N) | 133 | 32 | 33 | 118 |
2. | 2003 年 7 月以前の転出決定者数 (A) | 1 | 3 | 0 | 2 |
3. | 2003 〜 2004 年度定年退職者数 (C = C1 + C2) | 3 | 2 | 0 | 11 |
4. | 首大移行可能教員数 (M = N - A - C) | 129 | 27 | 33 | 105 |
5. | 2003 年 8 月から 2005 年 3 月までの転出決定者数 (B = B1 + B2) | 13 | 6 | 6 | 14 |
6. | 首大就任非承諾者数 (D) | 22 | 7 | 10 | 1 |
7. | 教員流出数 (R = B + D) | 35 | 13 | 16 | 15 |
8. | 過去の 20 ヵ月あたり平均転出者数 [推定値] (E) | 3.3 | 0.8 | 1.7 | 7.3 |
9. | 転出決定者数 / 平均転出者数 (B / E) | 3.90倍 | 7.20倍 | 3.60倍 | 1.91倍 |
10. | 教員流出数 / 平均転出者数 (R / E) | 10.50倍 | 15.60倍 | 9.60倍 | 2.05倍 |
11. | 教員流出数 / 首大移行可能教員数 (R / M * 100) | 27.1% | 48.1% | 48.5% | 14.3% |
表 1の各項目は,基本的に 25 名だけが「首大」への就任拒否をしたわけではない 3節の 表2 および 都立大学教員流出情報2003-2004年度 の 表 1の対応する項目と同じである。これらの記事の説明も参照されたい。表中の N, A, C1, C1 等の記号も以前の表の記号と揃えてある。
2003 年 7 月において都立大学に在職しており,本人が望めば首大に就任することが可能であった教員の数,すなわち,各学部の 首大移行可能教員数 は,2003 年 7 月時点の教員数 から 2003 年 7 月以前の転出決定者数 および 2003 〜 2004 年度定年退職者数 を差し引くことによって得られる。
首大就任非承諾者数 とは,2004 年 2 〜 3 月に東京都大学管理本部が教員に対して提出を求めた (首大への就任)「意思確認書」の 非提出者数と同年 7 月の「就任承諾書」非提出者数の合計である。この首大就任非承諾者数 に 2003 年 8 月から 2005 年 3 月までの転出決定者数 を加えれば,首大構想発表から首大開校直前までの 20 ヵ月間の 教員流出数 となる。( 1 節でも述べたように,首大就任非承諾者の中からの転出は 2003 年 8 月から 2005 年 3 月までの転出決定者数 に含めていないので,両者の間に重複はない。) なお,ここでは「転出」という言葉を他大学等への転出以外の退職 (抗議辞職等) も含めた意味で使っており,上記 20 ヵ月間に各学部教授会で正式決定された転出 (ないし退職等) のみをカウントしている。
過去の 20 ヵ月あたり平均転出者数 [推定値] は,1993 年度から 2002 年度までの 10 年間の退職 (転出および定年退職) 者数から,名誉教授就任数を除いた数の 20 ヵ月あたりの平均値 である (データ出所「東京都立大学学報」)。 「東京都立大学学報」からは定年退職者の厳密な数がわからないため,定年退職者数の代理として名誉教授就任数を使った。一般に,名誉教授への就任は定年退職とリンクしているからである。詳しくは,25 名だけが「首大」への就任拒否をしたわけではない の 3節を参照されたい。ただし,本稿と異なり,そこでは 12 ヵ月あたりの平均値を示している。
