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都立大経済学部の分裂と首大経済学コースの消滅
都立大学経済学部 戸田裕之
2005.1.8
 

はじめに

本稿の目的は,このサイトにおいて2004年7月末に発表された 25名だけが「首大」への就任拒否をしたわけではない の第6節の内容をその後公にされた情報に基づいて敷衍することであ る。 また,この文章は,既に発表された 都立大学人文学部文学5専攻の崩壊 および 都立大学法学部法律学科の崩壊 とともに,都立大学文系3学部崩壊の記録の一部を構成するものである。この文章を作成する にあたっては,異なるグループの行動について,できるだけ客観的に事実 (誰がどう行動したか,何が起こったか) のみを記述するように 心がけた。誤りの指摘や関係者からのコメント・反論を歓迎する。toda AT kubidai DOT com 宛にお送りいただければ幸いである。

以下の説明で参照する表は,このページの最後に記載されている。 ☞ここ をクリックするとブラウザの別ウィンドウに表示することができる。

 

変更履歴

  • 【2005-01-24】都立大経済学部の分裂 節で言及されている「東京都庁舎における社会人向け夜間修士課程」 (通称「ビジネススクール」) の専任教員情報を表およびその背景色説明部分に追加した。
  • 【2005-03-07】就任承諾書提出後,2004年度中に転出が決定した教員を示す背景色およびその説明を追加した。
 

東京都立大学経済学部 vs 首都大学東京都市教養学部都市教養学科経営学コース

表1は,2003年8月1日時点において都立大学経済学部に在職していた教員のリストと,首大都市教養学部都市教養学科経営学コースの教員リストをひとつにまとめて示したものである。表に掲載した情報は,いくつかの例外を除いてすべて都立大学,都立短期大学,首大または東京都大学管理本部のホームページで公表されているものである。

教員は,専門分野に応じて「経済学」(近代経済学),「経済史・経済思想史」(マルクス経済学),「経営学・会計学」の3つのグループに分類されている。以下ではしばしば,それぞれを単に,経済学グループ,経済史グループ,経営学グループと呼ぶ。

最右欄の個々の教員の専門は,首大就任予定教員については,首大ホームページに記載されているものに従った。首大就任予定教員以外の専門の情報は,都立大または都立短大ホームページから得たものである。ただし,いずれのホームページにも掲載されていない数名の専門については,筆者が補足した。ホームページに複数の専門が記載されている場合には,最初の2つまで,字数が多い場合には最初のひとつだけを表に示した。

教員名欄の背景色の意味を説明しよう。

  • この背景色は,2003年8月1日時点で都立大学経済学部に在職した教員のうち,首大に就任しない教員を表す。この中には,2003年度末に既に転出した教員2名が含まれる。(この転出は「8.1事件」によって引き起こされたものである。) すなわち,背景 は,都立大から首大への「移行」に際して流出した教員を表している。
  • この背景色は,2003年8月1日時点で都立大学経済学部に在職した教員のうち,首大経営学コースに就任する教員を表している。すなわち,背景 は,都立大経済学部と首大の間の共通部分である。
  • この背景色は,2003年8月1日時点で都立大学経済学部に在職した教員のうち,首大への就任承諾書を提出した後,2004年度中に転出が決定した教員を表している。
  • 2003年8月1日時点で都立大学経済学部に在職した教員のうち,背景色なしで表示した教員は,本稿執筆時点では首大に就任するか否かが不明な教員である。
  • この背景色は,都立短期大学から首大経営学コースに就任する教員を表している。すなわち,背景 は都立短期大学と首大経営学コースの間の共通部分である。
  • 首大経営学コース教員のうち,背景色なしで表示した教員は,2004年の公募で首大に採用された教員である。
  • 経済史および経営学グループの教員のうち,専門欄がこの背景色で示されている教員は,「東京都庁舎における社会人向け夜間修士課程」の本稿執筆時点の専任教員である*1

都立大経済学部の分裂

現職が都立大教員でない者は別として,表1のグループ分け (「経済学」「経済史・経済思想史」「経営学・会計学」) はそれぞれ,都立大学経済学部の第1〜2講座,第3講座,第4講座に対応している。都立大学経済学部においては,首大構想に対する一昨年来の反応は,第1〜2講座と第3〜4講座の間で著しく異なった。

経済学グループ (第1〜2講座) は,首大構想は研究機関としての大学の機能を軽視しており,これまでに都立大学が蓄積してきた学問的資産に対する正当な評価をまったく欠くものであるとして,一貫して批判してきた。このグループは,2003年7月,経済学・経営学分野では全国8大学のひとつとして,文部科学省21世紀COE (中核的研究拠点) プログラムに採択されていた*2。しかし,表1からわかるようにその大半は首大への就任を拒否し,COE事業の目標である「持続可能な世界的研究教育拠点の形成」は明らかに達成不可能となったため,文部科学省との交渉を経て2004年10月にはCOE事業推進の辞退を正式に決定した。

経済史グループ (第3講座) および経営学グループ (第4講座) は,一貫して首大構想に協力する行動をとってきた。学部教授会の場では,これらのグループ所属教員からも,構想に対する否定的見解,首大に導入が予定されている制度等に対する批判や不満の声がしばしば聞かれたが,それらを外に向けて発することは一度もなかった。この2グループは,2003度から東京都庁舎において社会人向け夜間修士課程 (通称「ビジネススクール」) を開講している。この目的のために,2001年度まで何年もの間5名ないし6名 (講座定員9名) に過ぎなかった経営学グループの教員数は,表1からわかるように首大開学時には少なくとも14名にまで増加することになり,さらに増員が予定されている*3

表1の「2003年8月時点での都立大教員」数にからわかるように,経済史グループ (第3講座) および経営学グループ (第4講座) 所属教員の数は,経済学グループ (第1〜2講座) 所属教員の数をわずかに上回っている。その結果,2003年8月以来の首大構想具体化の過程での,経済学部の学部としての行動 (あるいはむしろ何ら行動しないという選択) は,すべて経済史グループ (第3講座) と経営学グループ (第4講座) によって実質的に決定されたものである。


首大経済学コースの消滅

2003年9月下旬,東京都大学管理本部が示した首大学部構成案では,現在の都立大学経済学部に対応するものとして,「都市教養学部都市教養学科経済学コース」と「都市教養学部都市教養学科経営学コース」が存在した*4。 しかし,経済学グループの教員12名は,2004年2月から4月上旬まで求められた首大就任「意思確認書」の提出を最後まで保留した*5。これに対して,2004年4月,文科省への首大設置認可申請に際して,東京都大学管理本部は,経済学コースを首大都市教養学部の構成要素から除外した。この間の詳しい経緯については,「都立新大学構想の評価と経済学者たちの選択」(岩波書店「世界」2004年7月号) のPDF版または HTML版 をお読みいただきたい。

一説には,大学管理本部は新たに人員を公募して,経済学コースを復活させることを考えているという。 25名だけが「首大」への就任拒否をしたわけではない の第7節において,私は次のように述べた。

既に発生した,および今後も継続するであろう [教員の] 大量流出現象は,首大という大学の質を予想し評価するための材料の半分に過ぎない。残りの半分は,今後首大がどのような質の人材の「流入」を促すことができるかである。

もし近い将来首大経済学コースの教員が採用されるなら,「残りの半分」を明らかにするための格好の材料が得られることになるだろう。 実証研究のためのデータの到来を楽しみに待ちたい。


おわりに—引き算と足し算

表1からわかるように,首都大学東京都市教養学部都市教養学科経営学コース*6は,2003年8月時点の都立大経済学部教員33名から

− 経済学グループ教員 14名

− 経済史・経済思想史グループ教員 1名

− 経営学・会計学グループ教員 1名

を差し引き,

+ 都立短大経営情報学科教員 2名

+ 都立短大経営システム学科教員 2名

を加え,さらに

+ 公募採用教員 1名

を加えてでき上がった。2003年度の都立大経済学部学生募集人員 (1部2部合計) は173名,2005年度の首大都市教養学部経営学コースの学生募集人員は240名である。

なお,首大開校時採用を想定した経営学グループによる2004年春の公募においては,当初2名の教授と1名の准教授を採用するとされたが,准教授の採用は見送られた。採用予定教授のうちひとりは,首大ホームページの教員リストに掲載されている教員であると思われる。残り1名については,実際に採用されたのか否か不明である。現在 (2005年1月) 研究員1名が公募されている。

 
表1: 都立大経済学部-首大経営コース対応表
 
分野 03年8月1日時点の都立大教員 首大経営学コース教員専門
経済学 淺井 学 統計学・計量経済学
浅野 皙 ミクロ計量経済学
飯村卓也 一時的均衡理論
大瀬戸真次 ゲーム理論,理論経済学
金谷貞男 金谷貞男 経済成長論・人口成長論
神林 龍 労働経済学
畳谷整克 ゲーム理論,公共経済学
戸田裕之 計量経済学理論
戸堂康之 マクロ経済学・開発経済学
中村二朗 労働経済学
日向野幹也 ITと金融の関係
丸田利昌 ゲーム理論,理論経済学
村上直樹 産業組織論
村田安寧 空間経済学・経済発展論
脇田 成 マクロ経済学,労働経済学
渡辺隆裕 渡辺隆裕 ゲーム理論,ミクロ経済学
渡部敏明 金融工学,証券市場の計量分析
経済史・経済思想史 岩間俊彦 岩間俊彦 イギリス社会史,経済史
深貝保則 経済思想史
宮川 彰 宮川 彰 経済理論,資本蓄積論
矢後和彦 矢後和彦 フランス経済史・国際金融史
山崎志郎 山崎志郎 現代日本経済史
若森みどり 若森みどり 産業思想,社会思想史
経営学・会計学 朝野熙彦 朝野熙彦 マーケティング・サイエンス
薄上二郎 海外日系企業の経営管理
小谷重徳 プロダクションマネジメント
川本 淳 連結会計を中心とする財務会計論
桑田耕太郎 桑田耕太郎 経営学・組織論
千葉準一 千葉準一 会計学
長瀬勝彦 長瀬勝彦 意思決定論,実験経営学
中塚利直 中塚利直 経営科学,混雑現象の解明
日高千景 日高千景 経営行動の史的分析
細海昌一郎 管理会計
松尾 隆 松尾 隆 企業のオペレーションと戦略との関係
松嶋 登 経営組織論,経営情報論
嶺 輝子 嶺 輝子 国際会計論,資産評価論
宮下 清 人材と組織のマネジメント
山下英明 山下英明 オペレーションズ・リサーチ

*1 首大開校時には,経営学グループに属する都立短期大学からの就任者と公募による採用者もこの修士課程の専任教員に加わるものと予想するのがリーズナブルであろうが,現時点でweb上に公表されているリストに従った。 2005年度についての情報が公にされ次第改訂する予定である。
*2 都立大学のCOEは,経済学を含めて2分野であった。
*3 次節冒頭で触れる当初のコース別定数配分では,経営学コースの教員数は,経営学グループ20名と経済史グループ5名の計25名であった。
*4 都立大学経済学グループの定員は18名,COE事業推進者は16名であったのに対して,COE事業推進期間と大幅に重なる「中期計画」期間を想定した首大経済学コースの教員定員は13名であった。
*5 首大構想を嫌って,16名中2名の教員は2003年度末までに他大学へ転出,さらに1名が次年度末の転出を決めたため,最終的な「意思確認」対象者は13名であった。
*6 本稿執筆時点で,首大ホームページで公表されている経営学コース教員数は22名である。
この記事へのコメント

投稿日時: 2005-2-15 16:49,更新日時: 2005-4-17 0:39

投稿者:toda

まだまだ不足である

まず,本記事発表以来たくさんの方々に閲覧していただいたことを感謝したい。

しかしながら,まだまだ不足である。少なくとも日本の経済学関係者全員にこの記事を読んでいただく必要がある。あなたのお知り合いに是非この記事の存在を知らせていただきたい。(とくに海外留学中の大学院生は日本の情報に疎い状態にあるので,是非知らせてあげてほしい。) また,あなたが経済学関係者なら,計算機のHDにこの記事を保存し,将来いつでも参照できるようにしておくことをおすすめしたい。

*****

本文中でも述べたように,(「首大経済学コースの消滅」節の最後の段落における「研究計画」の表明を除いて) この記事では,客観的事実 --誰がどう行動したか,何が起こったか--のみを述べるようにしている。各グループの行動についての私個人の解釈・評価等は,個人サイトの記事この1年余を振り返って に記述されている。


投稿日時: 2005-1-10 22:09, 更新日時: 2005-1-10 22:11

投稿者:toda

正式名称

文章中において正式名称として使われている(ように読める)「首都大学東京都市教養学部都市教養学科経営学コース」という名称は誤りではないか,との指摘を受けた。正しくは,

首都大学東京都市教養学部都市教養学科経営学系経営学コース

というそうである。

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