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都立大学法学部法律学科の崩壊
人見 剛,水林 彪
2004.11.7
 

 「25名だけが「首大」への就任拒否をしたわけではない––都立大学文系3学部にける人材流出の実態––」「5 法学部」の末尾の文章は、「『首都大学東京都市教養学部法学系法律学コース』は,名ばかりでなく,実においても,『東京都立大学法学部法律学科』とはほとんど異質な組織とならざるをえない」ことを指摘した。その際、立論の根拠としたのは、文章作成時点において公表されていた情報に規定されて、もっぱら法学部から大量の首大非就任者が出たという事実であった。しかるに、先般、「首都大学東京」HPにおいて、「首都大学東京都市教養学部都市教養学科法律学コース」(以下、略して「首大法律学コース」とよぶ)の予定教員のリストが発表されたことにより、廃止される東京都立大学法学部法律学科と新設される首大法律学コースの教員編成を具体的に比較検討することができるようになり、両組織が名実ともに全くといってよいほど異質の組織であること、東京都立大学法学部法律学科は8.1事件を契機に実質的にも消滅させられてしまったこと、が一層明瞭となった。本コメントでは、このことを記しておくこととする。

 別表は、2003年8月1日時点において「都立大学法学部法律学科」に在籍していた教員のリストと、首大HPに発表されている「首大法律学コース」の教員のリストとを一つの表にまとめて示したものである。特に注目すべきは、以下の3点である。

(1)  2003年8月1日時点において、東京都立大学法学部の教員であったもののうち、民法、行政法、社会法、法哲学、法社会学、日本法制史、西洋法制史の7つの専門分野の教員は、全て(定年退職者1名を除く12名)、首大に就任しなかった。全員、首大に移行した分野は、わずかに、憲法、刑事法、国際法の3分野のみである。

(2)  首大法律学コースには、社会法分野(労働法、社会保障法など)と基礎法学分野(法哲学、法社会学、日本法制史、西洋法制史)の専任教員が存在しない。

(3)  民法、民訴法、行政法の3分野において、首大法律学コースの人事補充は、人員の点からみた場合、不足している。民法は4分の3、民訴法および行政法はそれぞれ、2分の1である。

 首大HPの「教員採用」欄によれば、現在公募されている法律コース教員は、知的財産法、法哲学、法社会学の3分野、各1名である。この新規公募と既に公表された上記教員リストを総合するならば、そこに、開設時点における首大都市教養学部法律コースの特徴は、次のようにまとめることができよう。

 1. 民法、民訴法、行政法などの基幹的実定法分野が非常に手薄である。

 2. 社会法の専任教員がゼロである。

 3. 法哲学・法社会学の教員をかりに採用できたとしても、法を歴史的に研究する法制史分野の専任教員を欠くこととなる。基礎法学分野全体の教員数も、東京都立大学法学部に比して半減する。

 4. 基幹的実定法分野や基礎法分野を縮小した分を、知財法、国際私法などのいわゆる先端的分野の拡大に振り向けているように見える。

 右の諸点は、おのずと、首大全体の理念を象徴的に表現しているように思われる。すなわち、基礎的基幹的学問領域を軽視する発想である。「都市教養学」という得体のしれない名称の中にも、一応は「教養」という語が見えるが、上記の「首大都市教養学部都市教養学科法律コース」の特徴は、「教養」重視とは正反対の方向であると言わねばならない。

 土台・柱・壁などの骨格部分の工事では大幅に手を抜き、その分、見栄えのよい流行の家具調度品を揃えることに資金を回した家屋を想起させられる。そこに住む人すなわち首大学生諸君はどうなってしまうのであろうか?

都立大学法学部法律関係と首大都市教養学部法律コースの教員対照表
 
専門 2003年8月1日時点の都立大学在籍者 *1 *2 首大法律学コース教員 *3
憲法 宍戸常寿 宍戸常寿
行政法 磯部 力  
人見 剛  
  村松 勲
民法 池田恒男  
石井美智子  
山口成樹  
遠藤 歩  
  石崎泰雄
  篠田昌志
  桶舎典哲
民訴法 中島弘雅  
我妻 学 我妻 学
商法 渋谷達紀
大杉謙一  
清水真希子 清水真希子
  矢崎淳司
  潘 阿憲
知財法   工藤莞司
消費者法   深津健二
経済法   酒井享平
刑事法 前田雅英 前田雅英
木村光江 木村光江
亀井源太郎 亀井源太郎
社会法 浅倉むつ子  
米津孝司  
国際法 森田章夫 森田章夫
森 肇志 森 肇志
国際私法   竹下啓介
法哲学 名和田是彦  
法社会学 高村学人  
日本法制史 水林 彪  
西洋法制史 渕 倫彦  
源河達史  
*1 2003年8月1日時点で東京都立大学法学部法律学科に在籍していた教員であり、このうち青色で表示した者は首大法律学コースに在籍しないことを示す。
*2 青色表示の中には、2003年度の定年退職者ないしこれに準ずる者2名、8.1事件以前に割愛承認を得ていた者3名が含まれる。
*3 赤色表示は2003年8月1日時点において東京都立大学法学部教員ではなかったことを示す。ただし、3名は東京都立短期大学の教員であった。
この記事へのコメント

投稿日時: 2004-11-11 16:31, 更新日時: 2004-11-11 16:59

「崩壊」論文についての誤解を解く      投稿者 人見剛、水林彪

「都立大学法学部法律学科の崩壊」論文(以下「崩壊」論文と略すことがある)について、その後、補足的なコメントをすることが望ましいと思われる反応が、インターネット上で見られたので、以下、この点について述べる。

1.事実経過

(1)「都立大学法学部法律学科の崩壊」論文について、「あるメトロポリタン人」なる方が、11月9日(火曜)13時23分に、Law School News のサイトの「情報提供掲示板」欄に以下のような投稿(以下投稿aとよぶ)を行った
http://www.houkadaigakuin.com/x/archives/003877.html の[5])。

東京都立大学法学部法律学科と首都大学東京のスタッフには、大幅な変化があることがニュースになっていました

http://www.kubidai.com/modules/xfsection/article.php?articleid=19

(2)以上を受けて、Law School News のサイトは、2004年11月09日の記事の「その他ニュース」に、次のような記事を掲載した。
(「首大非就任者の会」および「都立大学法学部法律学科の崩壊」の文字が、首大非就任者会のサイトとその文章へのリンクになっている)。

首大非就任者の会

 都立大学法学部法律学科の崩壊という記事が掲載されています(情報提供あるメトロポリタン人さんに感謝)

(3)上記(1)の投稿aに対して、同日23時41分、匿名で、次のような投稿(以下投稿bとよぶ)が、同じくLaw School Newsのサイトの「情報提供掲示板」欄になされた (http://www.houkadaigakuin.com/x/archives/003877.htmlの[7])。

>[5](2004年11月09日 23:41)

その記事は、法科大学院教員に関して、重大な間違いのある、デマです。ご注意。

http://www.bcomp.metro-u.ac.jp/law/ls/staff.html
正しくはこちら。

(4)投稿bについては、現在のところ、Law School News サイトのトップページに紹介されるニュースとしては、採用されていない。
http://www.houkadaigakuin.com/

2.コメント

 以上の事実経過をふまえて、以下5点、コメントする。

[1]「あるメトロポリタン人」なる方の投稿は、私どもの全く関知しないところで行われた。

[2]都立大学法学部法律学科の崩壊」論文は、本文をお読みいただければ誰にでもおわかりいただけると思うが、都立大学法学部法律学科および首大都市教養学部法律学コースについて論じたものであって、首大法科大学院に関して論じたものではない。したがって、投稿aの文章は、必ずしも、「崩壊」論文を厳密に要約したものであるとはいいがたい面がある。「東京都立大学法学部法律学科と首都大学東京のスタッフには、大幅な変化がある」と述べる投稿aの表現からは、「崩壊」論文が、「都立大学法学部法律学科」と「首都大学東京」法学関係一般(法科大学院を含む)とを比較しているかのようにも受け取れるからである。

[3]投稿bは、「その記事は、法科大学院教員に関して、重大な間違いのある、デマです」と述べている。文中の「その記事」が、「あるメトロポリタン人」の書いた文章をさすのか、それとも「崩壊」論文のことを指しているのか、必ずしも判然としないが、「崩壊」論文のことを指しているとするならば、「法科大学院教員に関して、重大な間違いのある、デマです」という非難は全く当たらない。「崩壊」論文は首大法科大学院には一言も触れていないのだから。

[4]投稿bが、「法科大学院教員に関して」と限定を付したことは、逆から見るならば、投稿bも、「崩壊」論文における首大都市教養学部法律コースに関する記述は「重大な間違いのある、デマ」ではない、ということを認めていると読むことができる。実際、「崩壊」論文は、首大サイトの都市教養学部法律学コースに掲げられた情報を資料的根拠とするものであり、資料を恣意的に操作したことは全くない。ちなみに、このコメントを公表する時点(11月11日)においても、首大サイトの掲げる首大法律コース教員リストは、「崩壊」論文を公表した11月7日時点のものと同一である。 (http://www.tmu.ac.jp/faculty/urban_liberal/04.html)。

[5]投稿bは、首大法科大学院について、http://www.bcomp.metro-u.ac.jp/law/ls/staff.htmlの参照を求めているが、これは、首大法科大学院専任教員リストではなく、「授業担当予定者一覧」であることに留意したい。ここには、首大法科大学院専任教員ばかりでなく、少なからざる数の非常勤講師や首大法科大学院以外に本籍をおく政治学教員(首大大学院社会科学研究科政治学専攻所属、http://www.tmu.ac.jp/graduate/2005/02_04.html)が名を連ねている。念のために付け加えておくが、「崩壊」論文が表示したのは、都立大学法学部法律学科および首大都市教養学部法律コースの専任教員の比較対照表である。ある教育機関の教育体制を第一次的に規定するのは、言うまでもなく、専任教員であることを銘記しなければならない。

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